6月はフランスではバカロレアの月
毎年恒例、バカロレア第1日目は哲学の試験から始まります。
2019年5月31日のレクスプレス紙の記事によると
”4つの教師組合がバカロレアテストの最初の日、6月17日月曜日の哲学試験の時、 「高校と学士課程の改革に対する反対を表明し、賃金の引き上げを求めて」監督業務のストライキを要求した。”
というニュースがありました。
教育省大臣が出てきて、「大丈夫、バカロレアの試験は通常通りとなるだろう」と発言していますが、どうなるのでしょう…
もくじ
フランスのバカロレアとは
国際バカロレア(IB)とは別物
フランスのバカロレアは今日本で話題の「国際バカロレア」とは全く違うものです。
国際バカロレア(IB: International Baccalaureate)は、”1968年にスイスのジュネーブで設立された非営利団体による、世界共通の大学入学資格及び成績証明書を与えるプログラム”です。
日本では国際バカロレアは海外の大学へ行くための資格を得るための「英語」のプログラムとしていくつかの高校で採用されています。
フランスのバカロレアは、これとは全くの別物です。
フランスのバカロレアはナポレオンが始める
フランスのバカロレアは、フランス教育省が発行する中等教育レベル認証(高校卒業認定)の国家資格です。
遡ること1808年にナポレオン・ボナパルトによって導入されています。
フランスでは、バカロレアを所得すれば、原則どこのフランスの大学へも入学できる資格を得たということになります。
希望者の定員を超えた場合は、成績の良い方から入学が認められるので、実質はどこの大学でも入学できるわけではなく、成績に応じたレベルの大学に入学希望を出すことになります。
大学に入ったからといってちゃんと勉強をしないと卒業は難しいので自分のレベルをわきまえながら自分のやりたいことが学べる学校選びをすることが大事です。
バカロレアの種類
普通・技術・職業
バカロレアには3種類あります。
普通バカロレア(Baccalauréat général)
技術バカロレア(Baccalauréat technologique)
職業バカロレア(Baccalauréat professionnel)
普通バカロレアの内訳
普通バカロレアが普通高校のほとんどの生徒が受ける一般的なバカロレアなのですが、普通バカロレアは、3つの分野に分かれています。
Baccalauréat scientifique (S 科学系)
Baccalauréat économique et social (ES 経済・社会系)
Baccalauréat littéraire (L 人文系)
科学系バカロレアが最も難しくその次に経済社会系、人文系となります。
ジャーナリストなど人文系の職種を希望していたとしても、一流のグランゼコールに行きたかったら、科学系バカロレアを取ったほうが良い場合もあります。
フランスのエリートの進路コースは、このように進みます。
科学系バカロレア → プレパ(グランゼコール準備校) → 有名グランゼコール
バカロレアの試験内容
バカロレアの日程
普通バカロレア(Baccalauréat général)の日程について見ていきます。
こちらフランス教育省のサイトから今年2019年のバカロレア試験の日程が参照できます。
それぞれの試験時間が長いのでだいたい1週間くらいに渡ってバカロレアの試験が行われます。
会場も自分の通っている高校の校舎だけでなく、科目によっては遠い学校に行って試験を受けたりします。
哲学から始まる
まず第1日目が哲学の試験。
毎年バカロレアの最初の試験は哲学と決まっていて、「哲学の試験が行われた」というニュースが流れると、今年もバカロレアが始まったのだなという風物詩になっています。
哲学は必須科目で、科学系、経済社会系、人文系のすべての生徒が受けなけれなならない試験です。
4時間の論述試験です。
高得点を取るのが難しい科目と言われています!
2日目は地理歴史。
これも試験時間は4時間!
あとは選択科目として、数学だったり、化学だったり、第1外国語、第2外国語などの試験があります。
このような感じで、1日マックス2教科の試験が7日間ほど続きます。
内容はほぼ論述か口述の試験です。
マークシートや穴埋め試験はありません。
哲学試験の内容
高校生がみな哲学を勉強するということも凄いですが、バカロレアの試験問題もすごい!
科学系、経済社会系、人文系によって問題が違うのですが、2018年科学系バカロレアの哲学の問題内容を見てみましょう。
Sujet 1 : Le désir est-il la marque de notre imperfection ?
(欲望は私たちの不完全性の象徴ですか?)
Sujet 2 : Éprouver l’injustice, est-ce nécessaire pour savoir ce qui est juste ?
(不公平を経験することは、正しいことを知るために必要ですか?)
Sujet 3 : Expliquer le texte suivant : MILL, Système de logique, 1843
(ミル『論理学体系』 (Système de logique) からの抜粋テキストについて解説してください。以下抜粋テキストが続く)
哲学の試験ではこれら3問のうち1問を選んで、4時間かけて回答します。
白紙の解答用紙に何枚にもわたって論述を書きます。