JNTO(日本政府観光局)の調査によれば、インバウンドの旅行者つまり訪日外国人観光客は年々右肩上がりに増えています。
今や日本中の有名観光地は、外国人観光客のほうが日本人よりも多いのではないかと思うくらいですよね。
欧米からの観光客かなと思ってみるとフランス語が聞こえてくることがよくあるので、フランス人観光客多いな〜といつも思っていました。
JNTOの統計によると、ヨーロッパからの観光客で一番多いのはイギリス人、次に多いのがフランス人です。
全世界でみても20位以内には毎年入っています。
多いのは、やはり近いアジア圏からの観光客が占めています。あとは、アメリカ、オーストラリア、カナダ。
英語圏以外の欧米ではフランスが一位です。
ヨーロッパから日本は遠いことを思うとやはり人気なのだなと思います。
フランス人は小さい時から日本の影響を受けていて日本が大好きなんです。
具体的にお話ししますね。
ジャポニズム
日本趣味の芸術家たち
フランスは、言わずもがな世界に誇れる文化芸術の国です。
パリは芸術の都と言われています。
ルネッサンス以降、莫大な富と権力を持っていたカトリック教会の力を背景にカトリックの国であったイタリア、そしてフランスで芸術が花開きました。
ジャポニズムって聞いたことありますよね?
19世紀にヨーロッパで流行した日本趣味のことで、フランス語でJaponisme(ジャポニズム)と表記されます。
19世紀中頃の万国博覧会への出品などをきっかけに、日本美術(浮世絵など)が注目され、西洋のアーティスト達に大きな影響を与えました。
ゴッホはオランダ人ですが、フランスで活動していて、浮世絵をそのまま油絵の作品の中に描いたり、桜のような枝のアーモンドの木の絵などを描いています。
ルノアールは、うちわを持った少女の絵を描いています。
睡蓮で有名なモネも着物の少女を描いています。
その名も「ラ・ジャポネーズ(日本の女性)」
その頃活躍していた印象派の画家は日本美術に多大な影響を受けたといわれています。
空前の日本ブームが起こっていたんですね。
それでもこの頃日本の文化について造詣の深かったのは一部の文化人のみで、庶民は日本という国がどこにあるかなど知らなかったのではないでしょうか。
とても違っていて似ている国
フランスは誇り高い国です。
絶対的支配に対抗して市民が血の革命をおこした国です。
世界的国家という誇りがあり、強国アメリカの言うことに素直に「ウイ(はい)」ということもありません。
自国の文化にもとても誇りを持っています。
そういうフランスから、いろんな面で対極にあるくらい異なった国、日本はとても魅力的に映るようです。
地理的な位置、歴史、民族の考え方、慣習など全く違います。
一方は大陸、国境を接する他の国々との抗争、異文化の混入、自尊心とライバル意識が高く自己主張の国。
一方は島国で鎖国をし、良いものは器用に取り入れるが独自の文化を育み、周りとの調和、謙虚さを大事にする国。
とても違っているけれど、どちらも豊かな歴史とすばらいい文化を持つ国。
人も自分と違ったものに惹かれるということは多いですから、フランスと日本がお互い、独自の豊かな異国の文化に惹かれるのは当然のことかもしれません。
空前の第2次ジャポニスム?
ジャポニズムからはじまって、インテリ層の間では常にある一定の数の日本通がいました。
有名な相撲好きのジャック・シラク元大統領などが有名ですね。
しかし!
今の日本ブームは少し違います。
庶民の間に日本ブームがまきおこっています。
1つは漫画文化もう1つは日本食です
フランスでの漫画・アニメ
フランスでも独自の漫画文化があります。
BD(bande dessinée バンド・デシネ)です。
A4よりももう一回りくらい大きいハードカバーの全面カラーの漫画なのですが、歴史は古く19世紀が発祥とも言われています。
日本語にも翻訳されている「タンタンの冒険( Les Aventures de Tintin )」シリーズや「アステリックス (Astérix le Gaulois) 」などはBDのクラシックです。
タンタンは初作品が1929年ですから、フランス人で子供の頃タンタンのBDを読んだことがない人はいないでしょう。
BDが大衆文化の1つとして確立しているフランスなのですが、日本の漫画は別のジャンルのもの「MANGA」として、その地位は揺るぎないものになっています。
フランスの大きなスーパーマーケット(ハイパーマーケットと言われる)では、本も購入できるのですが、そのスーパーマーケットの中にさえ、「MANGA」のコーナーがかなりの広さのエリアを牛耳っています…
その子は、家にたくさんの漫画を持っていてうちの子よりずっと詳しかったですよ。
日本のアニメもフランスで昔から放送されています。
お父さんお母さん世代(40〜50代)は、テレビアニメの「グレンダイザー」、「キャプテン・ハーロック」、「キャンディ・キャンディ」を見て育っています。
その次の世代は、「ドラゴンボール」、「聖闘士星矢」、「シティーハンター」、「セーラームーン」、「キャプテン翼」でした。
フランス人は日本のアニメと漫画文化にどっぷりと囲まれて育ってきているんです。
ジャパンエキスポ(Japan Expo)
ジャパンエキスポは2000年にフランスで、フランス人の手によって始められました。
今や日本の大企業が協賛し、日本政府の経済産業省が補助するイベントも行われる日本文化の総合博覧会に成長しています。
2018年7月にパリで行われた昨年のジャパンエキスポは、
4日間で来場者総数: 243,864 人
出店ブース903(内 日本からのブース数:144)
邦楽ライブ、 和太鼓×津軽三味線のライブ・パフォーマンス、ゲーム、日本製品、漫画、アヌメグッス、など多彩な出店があり毎年大いに盛り上がります。
気合の入ったフランス人コスプレーヤーも集まります。
日本食
日本食は、フランスに限らず世界中で確固たる地位を確立しています。
寿司や焼き鳥などは、幅広い年齢層に受け入れられています。
フランスの食文化は豊かで、生の魚に拒否反応を示す人が他の訪米諸国と比べて少ない方だと思うので、刺身や寿司が広く受け入れられたのかもしれません。
ただ、フランスの日本食、特に寿司屋や焼き鳥屋は日本人ではなく、アジア系のオーナーによって経営されているところが多く、フランス人向けにローカライズされているので、日本人から見ると「あれ?」と思うようなメニューも少なくありません。
最近では美味しいラーメン屋やちゃんとした日本料理店も増えつつはあります。
フランス現地化が激しい寿司ですが、スーパーマーケットにも普通に並んでいて、しっかり市民権を獲得しています。
日本文化に興味のあるフランスの若者たち
ジャパンエキスポに来場する70%は、25歳以下だということです。
日本のアニメを見て、漫画を読んで育った世代が実際に日本に行ってみたい、できれば住んでみたいという人が多いのは不思議なことではありません。
漫画も「ワンピース」や「ナルト」のようなある意味ファンタジックな内容の漫画だけでなく、普通に日本の学生の生活を物語にしている学園物や少女漫画などまで幅広く読まれています。
少女漫画は、そのまま日本語で「Shôjo manga」というジャンルになるくらい人気なので共感している人も多いのでしょう。
漫画やSNSを通して日本の生活を見聞きし、興味を持ってくれている若い人たちが実際に日本に来て、リアルに日本の良いところも悪いところも発見するでしょう。
お互いの違う部分をよく知って認め合うのは大事なことですよね。